中高層マンションの家具固定についての提案
中高層マンションの壁に家具固定のためのアンカーを設けることを義務づけることは出来ないのでしょうか?
2008年6月1日に開催された拡大理事会で、後藤洋三副理事長から、こんな提案がありました。
地上で震度5程度の揺れでもマンションの上層階では震度6以上になることがあり、家具が転倒して怪我をします。
首都直下地震では、首都圏の大部分が震度5以上になりますから、家具の転倒だけで数十万単位の人が怪我をする可能性があります。
ところが、今の普通のマンションには家具固定の設備がありません。
大手デベロッパーが手がける中高層の分譲マンションにもないのです(超高級なものは知りません、縁がありませんので)。
マンションの壁に後から家具固定のための金物を取り付けることは実質不可能です。
分譲マンションのコンクリート壁は共有物ですから、管理組合の了承なしに釘一本打てません。
壁の表面に張ってあるボードに止めようとしても、特に最近の壁はコンクリートの芯壁に薄く細い鉄骨を張ってその鉄骨に石膏ボードを取り付けているだけなので、強い固定は出来ないのです。
天井に突っ張り棒をかけたり、天井との隙間を箱で塞いだりする方法がありますが、石膏ボードを吊っただけの天井の場合は抑えが効かず頼りになりません。
家具の転倒防止は、壁から強いアンカーを取って倒れないようにするのが最も確かな対策です。東京消防庁のホームページでも壁に止めるのが最も効果的としています。
転倒防止器具の取付け方法や安全な家具の置き方に関する指導指針
(東京消防庁 家具類の転倒・落下防止対策推進委員会)
それを可能とするためには、マンション建設の最初の段階から(建築確認申請の段階から)壁に強いアンカーを取り付ける設計にしなければなりません。
ところが、現状では買う人は無関心、売る方はいたってノーテンキです。
販売の現場で家具固定の金物を付けられないかと問うと、販売員はキョトンとしています。
うるさく言うと上司が出てきて「オプションで対応します」。
「では、コンクリートの壁にアンカーを埋めてくれ」と言うと、
「それは建築申請を再度やり直す設計変更になるのでもう不可能だから、壁に板を張ることで対応させてください」と言います。
「それでは頼りになるアンカーになりませんね」と言うと、「そうですね」。
かくして、家具を固定できないマンションが年間20万戸も建設され販売されているのです。
これは
強固な行政処置が必要でないでしょうか?
マンションの家具固定の問題を改善するだけでなく、身近な地震対策について大勢の人に注意を喚起し、耐震補強の推進にもつながると思います。
ちなみに、冷蔵庫の背面には固定のための取手が例外なく付いていて、どのパンフレットにも「地震対策の固定用」と書いてあります。これはPL法(製造者責任法)への対応のためと思われます。
ところが、マンション業者の方は冷蔵庫を置くところを作っても固定するところを作っていません。
もし、地震が起きて冷蔵庫等の下敷きになり死んだり大怪我したりする人が出たら訴訟になるでしょう。知っていて有効な対策を講じなかったと行政が訴えられるかもしれません。
東京いのちのポータルサイトとしては、今後、具体的に、
- 担当官庁がどのような対策を講じているか調査する
- 大手マンション開発業者がどのような対策を講じているかアンケートする
- それらの結果を踏まえて、いのポタのホームページやイベントで必要なキャンペーンを張る
ことを考えています。
2007年6月に消防法が改正されました。
2009年6月(予定)の同法施行後は、全国で約6千個所の大規模・高層建築物では大規模地震などに対応するための消防計画の作成が求められます。
「消防計画作成ガイドライン」には、計画の記載上のポイントとして、「収容物等の転倒・移動・落下防止」が示され、対応の実施や責任主体、実施方策、維持点検方策を明記するように求めています。
残念ながらこの法改正は、「多数の者が利用する大規模・高層」の建物である百貨店、旅館・ホテル、病院、学校、オフィスビル、地下街等が対象で、「共同住宅、倉庫等は除く」とされています。
ガイドラインには「対象外となっている防火対象物の消防計画においても、大規模地震等への対応等について本ガイドラインを参考とすることが望ましいと考えられる」と書かれていますが、東京いのちのポータルサイトは、この実効を上げるためにも、マンションで家具固定をしやすくする必要性を強く訴えます。